富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

  • 利用案内
  • 写真展・イベント
  • フジフイルム スクエアについて
JP / EN

富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

[image]上出俊作さんへの特別インタビュー

北海道から沖縄まで、海で暮らす生き物を撮り続ける
水中写真家 上出俊作さんへの特別インタビュー

SHARE

2022.06.03

沖縄県名護市を拠点に「水中の日常を丁寧に」というテーマで、海の中に暮らす生き物たちを幅広く撮影している上出俊作さん。北海道から沖縄まで、日本の海で暮らすさまざまな生き物の日常を、丁寧に切り取った写真集も発売される予定です。
今回、「写真家たちの新しい物語」にご出展いただく上出俊作さんに、水中で小さな生き物を撮影し始めたきっかけや、水中の生き物を撮影するうえで注意していることなどについて伺いました。

プロフィール

上出 俊作

KAMIDE SHUNSAKU

水中写真家。1986年、東京都生まれ。
沖縄県名護市を拠点に「水中の日常を丁寧に」というテーマで、数mmのウミウシからザトウクジラまで、海の中に暮らす生き物たちを幅広く撮影。そのフィールドは、沖縄の海を中心に日本各地に及ぶ。被写体とじっくり向き合うことで生み出される作品群は、繊細な色彩を纏うマクロ写真から躍動感溢れる迫力のワイド写真まで、その表現は幅広い。水中写真との出会いは、大学4年生の冬。外資系製薬会社に就職しサラリーマン生活を送るかたわら、水中写真にのめり込む。2014年に沖縄移住の夢を叶え、水中写真家として活動をスタート。2017年からは、プライベートフォトセミナーを開始。丁寧な指導で“フォト派ダイバー”から人気を博している。ダイビングメディアへの写真・記事提供やセミナーイベントで水中写真の魅力を発信する他、ブログ「陽だまりかくれんぼ」 にて水中写真撮影の手法も解説している。

自己紹介をお願いします。

  • [image]©上出 俊作

    こんにちは、水中写真家の上出俊作です。沖縄県本島北部の名護市を拠点に、日本各地の水中を撮影しています。今回の展示では大きさが2mmや3mmの小さい生き物の作品を展示しますが、普段はザトウクジラやマンタなどの大きな生き物、水中の洞窟やサンゴ礁の景色など、さまざまなものを撮影しております。

小さな生き物たちを撮影し始めたきっかけは何ですか?

  • [image]©上出 俊作

    まず、水中写真を撮るようになったきっかけは15年以上前、大学生の頃です。沖縄の宮古島に旅行し、シュノーケリングをしました。水中に入ると、目の前の手の届く距離に水族館で見たようなカラフルな魚がたくさんいて驚きました。「水中の生き物ってこんなに綺麗なんだ」と思い、防水の「写ルンです」で魚たちを撮影した体験が強烈に印象に残っています。それからダイビングを始め、水中写真の世界にのめりこんでいきました。

最初は旅行でたまたま撮影したのですが、ダイビングと水中写真を始めてからは、プロの写真家になることも考え始めました。
大学を卒業した後はサラリーマンをしていましたが、沖縄に移住して海の近くに住みたいという気持ちはありました。そこから紆余曲折あり、2016年くらいに水中写真家として活動し始めました。
いろいろな生き物を撮影していますが、今回の展示は1cmほどの小さな生き物だけを集めています。
当初、私自身は、小さな生き物を撮影するのは特別なことだとは思っていませんでした。しかし、今回の写真展の最初の打ち合わせで、被写体の生き物のサイズについて「そんなに小さいのですか!」と驚かれたことで、自分が好んで撮影していた生き物が小さかったことに気づきました。自分の中ではそれまであまり意識していませんでしたが、小さい生き物を可愛いと思って撮影していたようです。

今回の写真展のもうひとつの特徴である、「色彩の豊かさ」も意識して撮影していますか? 

  • [image]©上出 俊作

    はい、意識して撮影しています。私の住む沖縄だけではなく、北海道や和歌山など、どの海の水中の景色も本当にカラフルです。しかし、水があることによってカラフルな色は失われます。水が光を吸収することによって、赤やオレンジの色彩が特に失われてしまうからです。海といえば一般的には青色がイメージされますが、実際にはいろいろな色があることを再現するため、一旦青色をなくすという撮影を行っています。今回も、青色が全くないような、水の色を抽出した展示になっていると思います。

水中の生き物を撮影する中での具体的なエピソードを教えていただけますか?

  • [image]©上出 俊作

    今回の写真展では、チャツボボヤという白と緑のホヤのうえに、ハゼが乗っている写真があります。ちょうどハゼがホヤに乗った短い瞬間を切り取った作品に見えるので、「さすがプロの写真家だ」と思っていただけるかもしれません。
    しかし、この写真、実は3日間かけて撮影したものです。水中にいられる時間は限られているので、初日はなかなか思うように撮影できなかったのです。次の日、「この魚がこの場所を気に入り、同じ場所にいるのではないか」と期待し、もう一度見に行ってみました。すると、思った通り同じ場所にいたので、今度はじっくり時間をかけて撮影しました。ところが、家に帰り撮影した写真を見返すと、その写真に自分自身がドキドキしませんでした。「これではいけない」と思い、翌日も同じ場所へ撮影しに行き、ようやくファインダー越しにハゼと目があった瞬間を撮ることができました。
    このように、この作品は自分でも思い入れがある作品ですので、展示会場でも大きく展示させていただきました。

ドキドキする写真というのはどういう感覚なのでしょうか。

  • [image]©上出 俊作

    なかなか言語化するのは難しいですが、ひとつは「目があった瞬間」と言えるかもしれません。魚の側からすると私と見つめ合いたくはないと思いますので、撮影されて迷惑だと思っているかもしれません。でも、私自身は、ファインダー越しに生き物と対峙していて、にらめっこしているような楽しさを撮影しているときに感じます。それが写真にしっかり現れていると、写真を見たときにドキドキする感覚があります。

撮影時の注意やこだわりは何ですか?

今お話しした、目があうような感覚を表現するというこだわりはもちろんありますが、水中の環境や生き物はそのものが美しいので、私自身は特別なことをする必要はないと思っています。「じっくり向き合い、丁寧に切り取る」ということをしっかり心がけていると、その魅力はおのずと浮き上がってくると思っているからです。「なにかやってやろう」というよりは、そのものの魅力を引き出すために余計なものをそぎ落としていくことが、自分にとっての水中撮影のこだわりです。

撮影時に注意していることは、撮影している生き物への配慮です。どうしても水中撮影は、生き物との距離が近くなりがちです。例えば、鳥や動物を撮影している方は望遠レンズで遠くから撮影することが多いと思いますが、どうしても水中ではそれができません。水の層があり、被写体がきれいに写らなくなってしまうからです。よって、どうしても近くに寄らざるを得ない、ある意味生き物への負荷がかかりやすい撮影となってしまいます。それを踏まえたうえで水中の生き物を撮影するのであれば、より配慮をしなければなりません。注意すべきことはいろいろとありますが、基本的なことは、生き物に触らないこと、動きをコントロールしようとしないことが挙げられます。また、最近特に意識しているのは、「撮らない」という選択肢を積極的に選ぶことです。撮り始めてしまうとどうしても撮ることに熱中してしまいます。その撮影行為自体の、自然に与えてしまうインパクトが生き物にとって許容できないものであるならば、勇気をもって撮らないでおく、ということは意識しています。

「3日間待って撮影していた」というのも生き物への配慮からでしょうか。

  • [image]©上出 俊作

    そうですね。私としては、こちらを向いてくれる瞬間をもちろん待っていましたが、一方で撮影に3日もかけてしまって申し訳ない気持ちもあります。また、撮られるほうの立場で「そこまでして撮影するのであればちゃんと撮影してほしい」という気持ちも想像して撮影しています。

このインタビューをご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

この度は、このような機会をいただき、本当にありがとうございます。このインタビューも、ご覧くださり感謝しています。今回の写真展では、これまで皆さんが目にした海の写真とは全く違う世界を見ることが出来るのではないかと思います。ぜひ直接会場に足を運び、小さな生き物たちと目があい、ドキドキする体験をしていただきたいと思います。
今回は大人も子どもも楽しめる仕掛けや構成も考えておりますので、ぜひ気楽に立ち寄り、お楽しみください。

今回の写真展に合わせ、写真集を発売します。写真展は全部で約30点展示しますが、写真集ではその作品を含めた100点ほど掲載していますので、かなり見ごたえがあると思っています。装丁にもこだわったので、手触りなども楽しんでいただきたいと思います。写真展にお越しのうえ、ぜひ手に取ってご覧ください。