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岩崎量示氏インタビュー 岩崎量示 写真展 「タウシュベツ拾遺(しゅうい)」
撮影:岩崎量示
2013年5月24日(金)~2013年5月30日(木)まで開催される岩崎量示 写真展 「タウシュベツ拾遺(しゅうい)」について、岩崎量示氏にインタビューいたしました。
―― まず、この被写体に目を奪われるのですが、これは何なのでしょうか?
岩崎 現在の様子からは想像が難しいのですが、じつはこれは古い鉄道橋なのです。通称タウシュベツ橋梁、コンクリート製のアーチ橋です。1937年に北海道の旧国鉄士幌線の一部として作られました。その後、1955年に水力発電用のダムの完成にともなって線路が移設され、鉄道橋としての役割を終えましたが、取り壊されることなく現地に残されて今に至っています。水位の変動が大きいダム湖にあるため、一年を通じて水没と出現とを繰り返すことでコンクリートの劣化が進み、近い将来の崩落が予想されています。
―― この橋を撮り始めたきっかけは?
岩崎 たまたま、です(笑)。僕は北海道好きという単純な理由で、2005年に埼玉から北海道の大雪山国立公園内の温泉街に移り住みました。その近くにこの橋があったのです。間もなく壊れてなくなるであろう橋の最後の様子を誰かが記録するべきだと思ったのですが、継続して撮影をお願いできるようなカメラマンの知り合いもいなかったので、自分で撮ることにしました。この橋を撮るために写真を勉強した、というのが本当のところです。
―― 撮影しているときのエピソード(辛かった時、感動した時、ハブニング等)をお聞かせ下さい。
岩崎 今回の展示にも加えている虹の写真を撮った時のことです。夜明け前の現地には、一人の先客がいました。カメラを構えて待つことしばらく。日の出の頃になると風が強く吹きはじめ、空に浮かぶ黒い雲からは雨が落ちてきました。「今日はダメだ。あなたも帰った方がいい」と僕に声をかけて、おじさんは帰っていきました。彼の姿が見えなくなると、にわかに雲が切れて日が射し込み、アーチ橋の上にくっきりと虹が架かりました。もしかすると自分は運が良いのかもしれないと、初めて思った一瞬でした。
―― 今回の写真展で「特にここは見て欲しい!」というポイントをお聞かせ下さい
岩崎 この被写体が、かつて鉄道の走ったコンクリートアーチ橋だとすでに説明してしまいましたが、そうした予備知識をいったんリセットして展示をご覧いただければと思います。「これは何?」という、僕がこの橋を撮り始めた当初の感覚を、みなさんと共有することができれば幸いです。そして、こんなものが残る土地にも少し興味を持っていただければ。
―― このページを見た方に皆様にメッセージやPRをお願いします。
岩崎 展示期間中は会場におりますので気軽にお声かけください。展示内容についてはもちろん、写真のこと(写真歴8年ほどです)、北海道のこと(原付で2周しています)など、お話しできればと思います。
撮影:岩崎量示
1979年埼玉県生まれ。立教大学経済学部卒業後、原付で北海道一周や四国遍路など、2年ほど国内各地を旅する。2005年に北海道河東郡上士幌町糠平に移り住み、鉄道廃線跡に残るタウシュベツ橋梁を記録するため写真を学ぶ。NPS会員。