「絶対風景 絶景でつづる日本列島」写真展 隔月刊「風景写真」編集長 石川薫氏インタビュー

石川薫氏

撮影:高橋真澄 撮影:高橋真澄

2013年2月22日(金)から3月13日(水)まで開催されるフジフイルム スクエア企画展「絶対風景 絶景でつづる日本列島」は、世界に誇れる日本の風景の魅力を観る人に再発見してもらおうという意欲的な写真展です。話題の写真展の見どころや制作の舞台裏を、隔月刊「風景写真」の編集長で、同展の企画構成を担当している石川 薫氏にお聞きしました。

―― はじめに、石川さんは今回の写真展の企画・構成者をされているということですが、企画・構成とは具体的にどんなことをしているのですか。

石川 はい、まず単純に写真展そのものをどんな展示にしようかということを考えるところから始まり、大まかなイメージをまとめて提案するところから、実際に展示する作品を集めて、展示順や展示方法を考えるのが主な仕事ですね。

―― この写真展では、まず「絶対風景」というタイトルがインパクトがあって印象的なのですが、このタイトルにはどういう意味が込められているのでしょうか。

石川 「絶対風景」という言葉は、この写真展のために考えた造語なんですけど、 “ある風景が見せる最高の表情”という意味で考えました。物理的にそれ以上温度が下がらないことを絶対零度と言いますが、それと同じように“これ以上はない絶対的な状態”という意味でつけたタイトルです。

―― 風景の“最高の表情”ということですが、具体的にはどういう状態のことを言うのでしょうか。

石川 一般的には風景は動かないもので、いつでもそこに行けば見られるものだと思われてますよね。これまで絶景と呼ばれるものもそうで、古くは日本三景と呼ばれる松島、宮島、天橋立のように、地形的に美しかったり、珍しいものを絶景と呼んでいたと思います。でも、実際には風景というのは地形だけで成り立っているわけではなくて、季節によって彩りが変わったり、天候や時間帯によっても見え方が随分違います。また、光や風、霧といった自然現象によって、まったく表情が変わったりと、つまり、絶景というのは、ただそこに行けば見られるものではなくて、いろいろな条件が絡み合った、ある瞬間に現れるものなんです。そうした瞬間に見える風景のことを今回「絶対風景」と名付けてみました。

―― それは“絶景”という言葉の新しい解釈と言えますね。

石川 そうだと思います。絶景ってわりとありふれた言葉ですけど、じゃあ絶景ってなにかって聞かれてすぐにちゃんと答えられる人の方が少ないと思うんですよ。実際、この写真展を企画する準備段階で、何人ものプロの風景写真家に「あなたにとっての絶景ってなんですか」と質問してきましたけど、結構皆さん「えっ? 絶景? 何だろう?」といった感じで首をひねる人の方が多かったですね。結局、最後の方に聞いた写真家さんから「あなたが絶景の新しい定義を考えるべきだ」と言われたのが大きかったです。それまでは今までの認識の中にある絶景を考えようとしていたのが、ゼロから自由に考えられるようになりましたから。

撮影:平松寿子 撮影:平松寿子

―― 今回の写真展にはサブタイトルに「絶景でつづる日本列島」とつけられていますが、ここにはどのような意図があるのでしょうか。

石川 絶景と言えば、海外のスケールの大きな風景や、日本人には見慣れない珍しい風景をイメージする人も多いと思います。でも、日本の風景にも、それらに負けず劣らず十分に個性的で魅力的な絶景があると思います。世界的に見てもこれほど森林が豊かで多様な国は珍しいと言っても間違いではないですし、これほど四季がはっきりと分かれていて、また、豊富で清らかな水が国土を潤している国も多くはありません。海外の風景を知る写真家ほど、日本の風景の美しさは世界にも類を見ないと言う人が多くいます。テレビや写真で海外の風景を見て、「これは日本の風景なんてかなわない」と思っている人も多いかもしれませんが、それもある意味、映像によって美しく撮られた「絶対風景」です。日本の「絶対風景」を連ねた写真展で日本列島を見直してほしい、という意味でこのようなサブタイトルをつけてみました。きっと日本の風景に対する新しい発見があると思いますよ。

―― 今回の展示作品はどのようにして選考されたのですか。

石川 主にこれまでに『風景写真』の誌面を飾ったことのあるプロやハイアマチュア、合わせて400人以上の方に協力をお願いして作品を提供していただき、その中から選考しています。また、今回の写真展のために作品提供をお願いした写真家の作品も含まれています。今、最後の絞り込み作業を行っているところですが、富士フイルムフォトサロンのすべての展示スペースを使って展示しても足りないくらい凄い写真がいっぱい集まっていますので、最終の選考はかなり辛い作業ですね。

―― 最後に、あらためて今回の写真展の見どころをお願いします。

石川 2012年の春に開催された「花咲けニッポン! サクラ・さくら・桜」をご覧いただいた方でしたら、おそらくそれまでご覧になった風景写真の写真展とは一線を画するスケールの展示に驚かれたことと思います。今回の「絶対風景 絶景でつづる日本列島」もまた、「花咲けニッポン!」を超えるような感動と驚きのある展示を考えております。写真愛好家はもちろん、写真を撮らない方でも十分に楽しんでいただける写真展になっておりますので、ぜひ会場にお越しください。2013年2月22日(金)~3月13日(水)、六本木の東京ミッドタウン、フジフイルム スクエアにて期間中休みなく、開催しております。 また、会期中に展示会場で私のギャラリートークも予定しています。スケジュールは、あらためてホームページ等で発表いたしますので、ぜひお越しください。

―― ありがとうございました。

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