富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

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富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

ポートフォリオレビュー/アワード 2023
受賞者紹介・プロセス動画

Vol.1 加藤 卓「土と太陽」 (推薦写真家:野村恵子)

慣れ親しんだ土地の見慣れた風景に、陽の光が当たることで新たな表情を浮かび上がらせ、その意味をも変容させていく…。“光で描く”メディアである写真を通して、作者が「発見」し続ける世界を表現します。

出展者コメント

いま自分が暮らしている神奈川の街や郊外を歩く。
単純にそこがどんな場所か見てみたい。
次に行った時にはその様子が少し変わっていたり、
自分も少し変わっていたりする。
変わらない風景と変わっていく風景。
いつかこの街から自分はいなくなるかもしれない。
そこで暮らし続けている人たちと他所から来た自分。
ただ草木はざわめき、土の匂いがする。
なんでもない事だが。
太陽の陽射しの下ではその様子がはっきりとして見えて、
些細なものでも力強い存在としてこの眼に浮かび上がる。
今はそのささやかなざわめきに耳を傾ける。

野村恵子選評

何でもない風景から、写真の面白さ・写真の力が伝わる。初回のレビューからファイナルに向けて、大きくブラッシュアップされていたことに、その対応力と今後の展開に可能性を感じた。
展示では、繊細かつ大胆に、その土地の「ざわめき」に呼応して切り取った、彼の写真世界に期待したい。

[Image]加藤 卓/野村恵子

プロセス動画

プロフィール

[Image]加藤 卓

加藤 卓 (かとう すぐる)
1989年 三重県生まれ
高校卒業後、鉄道会社に就職。
その後かねてより興味のあった撮影の仕事に携わるため、撮影スタジオにてアシスタントとして従事。
その後、映像、写真制作会社勤務等を経て、2022年よりフリーのカメラマンとして活動。
撮影全般の仕事に関わる中で写真に興味を持ち、国内外の写真家の作品を見る事で刺激を受け、自ら写真を撮る事で理解が深まり写真が好きになった。

Vol.2 松永 誠「I surrender」 (推薦写真家:中藤毅彦)

都市の中に、様々な形で無数に点在する「人工的な記号」。それらを「境界」という視点でとらえ、モノクロ銀塩プリントならではの白と黒のコントラストで表現した、「写真による都市の記号論」ともいえる作品群です。

出展者コメント

都市において「境界」を定義するさまざまな人工物。
境界物が持つ排他的性質と閉鎖的性質。侵入者あるいは逃走者との摩擦によって「境界」に新たな記号が生まれる。
画一的なパターンを持っていたはずの境界物が、内外のあらゆる要因によって変形し、独自性を帯びた様子を撮影した。
また今回、自身にとって初となる手焼きでのプリント制作を行う。
先人たちの制作方法を今新しく踏襲することで、現代においてなおフィルム撮影を行うということの意義を更に追求したい。

中藤毅彦選評

銀塩フィルムで撮影した作品をパソコンでレタッチした松永誠さんの応募作には原石の輝きがあった。写真を捉える直感力が良く、伸びしろもあり、今後変わっていく作品を見たいと思った。
受賞後、発表に向けての新たな撮影とともに、暗室で手焼き作業をすることでプリントとしての物質性も含めて、作品の完成度を高めていきたい。
展示では、彼の写真の発する熱・流れを感じて欲しい。

[Image]松永 誠/中藤毅彦

プロセス動画

プロフィール

[Image]松永 誠

松永 誠 (まつなが まこと)
1991年 鹿児島県種子島生まれ
2016年 法政大学経済学部卒業
当時組んでいたロックバンドが空中分解する。形は違えど表現することは続けたいと考えた時に、以前から興味があった写真の制作をすることを選んだ。
2021年 会社員として働く傍ら、ストリートスナップの撮影を始める。
2022年 Lomography the TEN AND ONE 2021 Monochrome部門 入選

Vol.3 minachom「短パン男」 (推薦写真家:浅田政志)

身近にいる人だからこそ撮れる、また、その人にしか撮れない写真があります。
さらに、そこに作者のユーモアと独自の視点が加味されて写し出された「短パン男」には、被写体への尽きない愛情と関心が凝縮されています。

出展者コメント

「とある男」の日常シーン。
かわいいらしい子どもや動物でも、人生を体に深く刻み込んだ老人でもない。
なぜかふとした瞬間に、この被写体に心を揺さぶられ、シャッターを切りたい衝動に駆られる。
「ふじどん」と呼ばれるその男は、春から秋にかけて頻繁に短パン姿で登場する。
脳裏に焼きつくその姿から浮かんできた「短パン男」という言葉を作品のタイトルにした。
長い間撮り溜めてきた写真を今回のポートフォリオを期に見直し、作品としてまとめる良い機会となった。

浅田政志選評

一次選考・初回のレビューの時から印象的だった。身近な人を撮るという行為は難しいが、誰が見ても笑顔になる作品。展示がとても楽しみ。
受賞後、minachomさんが寝る間を惜しんで(?)考えている展示プラン。三面の壁にどのようなリズムが生まれるか、楽しみにして欲しいと思います。

[Image]minachom/浅田政志

プロセス動画

プロフィール

[Image]minachom

©鷹巣由佳

minachom (みなちょむ)
愛知県生まれ。B型。
中学生の頃から写真のポストカードを集めるなど、写真を中心としたアート鑑賞に興味を持つ。25歳の時に初めて一眼レフを購入。30代前半から、より手軽なコンパクトデジタルカメラを好んで使用するようになる。
昔から異文化に触れることが好きで、これまでに40か国近くを訪れる一方、日常生活に埋もれた些細なことを発見して撮影するのが好き。
2011年以降、毎年開催されるアート好きなメンバーでのグループ展「アンでパンダ」のメンバーとして所属。
2017年 KG+のグループ展示「SANJYO GRAPHIE」に参加。

Vol.4 茂木智行「Scratched Moments」 (推薦写真家:GOTO AKI)

西ベンガル州の州都コルカタは、インドで第二の人口を誇る屈指の大都市です。爆発的なエネルギーに満ちたこの地の生活や文化を集積したような場所が、国内唯一の路面電車トラムです。トラムを通してとらえた作品の数々は、見るものに土地の熱気を伝えてくれます。

出展者コメント

コルカタでトラムを待つ。鈍く輝いた線路を人影が横切っていく。だんだんと不安になる頃、オートリキシャの波の向こうに、頭ひとつ出た白い車体が見える。席に座り、車掌からもぎられた切符と釣り銭を受け取る。
車窓には銅色に霞んだ街。見知らぬ情景が、子供の頃に乗った路面電車の記憶と重なり、夢中でシャッターを切った。

GOTO AKI選評

鉄道写真の類型にない、異邦人ならではの楽しさがある。展示までに再度インドに撮影に行くという心意気も素晴らしい。今後、人物写真などを加え、再セレクトすると、よりインパクトが強くなる。
受賞後、コルカタを再訪して撮影した写真は、それまで関心のあったトラムだけでなく、街のノイズや生活、人々の存在へとさらなる広がりをみせた。作家自身の幼少期を想起するというコルカタの情景は、記憶とも響き合い、流れては消えてゆく映像的な要素を内包している。作品は好奇心と不安が交差する旅人の視線が魅力的で、手触りのある展示空間が期待できそうだ。

[Image]茂木智行/GOTO AKI

プロセス動画

プロフィール

[Image]茂木智行

茂木智行 (もてぎ ともゆき)
1984年 京都府生まれ
会社員の傍ら、休暇には“味のある”鉄道風景を求めて世界各地へ赴く日々。
訪れた街の情景や乗り込んだ列車で出会った人々、車窓に広がる生活をファインダーに収めている。
2020年 個展「Tramvaj -紡ぐ轍-」 Nadar(東京/南青山)
2020年 グループ展「TRAMVISTA」 ギャラリー路草(東京/池袋)
2022年 グループ展「“GR”aphics of Railways」 アイデムフォトギャラリーシリウス(東京/新宿)
2023年 個展「望郷トラム」 PaperPool(東京/祐天寺)