富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

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富士フイルムが運営する写真展(東京・六本木)

ポートフォリオレビュー/アワード 2024
受賞者紹介・プロセス動画

Vol.1 赤堀 あゆみ 「ちちよせあつめ」 (レビュワー:浅田政志)

父親の還暦を契機に、それまで撮りためた家族の写真を見つめ直し編み直すことで、これからも続いていく家族との時間を再発見。ユーモアが散りばれられた圧倒的なパワーの作品は写真でしか伝えられない、残せない日々の記録の意味を伝えてくれる。

出展者コメント

父の還暦を機に、これまで撮りためた写真を改めてまとめたいと思いました。
記念日や日常の一瞬、繰り返されるけれど決して同じではない時間。
父を撮ることは、お互いのどちらかが棺桶に入るまで、あるいは燃え尽きてもなお続けるだろうと感じています。
そして、その後も父と母の存在を感じ続けるために撮っているのかもしれないと気がつきました。

けれど、写真を見返して感じたのは喪失への不安ばかりではなく、これまで積み重ねてきた時間の長さと強さ、そして思わず笑ってしまうほどの圧倒的なパワーでした。
このパワーや楽しさが写真を通じて誰かに伝わり、父と母、そしてそのまわりの人々の日常を楽しんでもらえたら幸いです。

浅田政志コメント

全体から、作者とお父さんとの関係性が伝わってくる、力のある作品。笑いの要素が前面に出ているが、どこか将来へのもの悲しさも感じさせてくれる。見る人の心が温かく、笑顔が自然と溢れるような展示となるよう、お母さんや地元の写真も足しながら構成を考えていこう。

[Image]浅田政志/赤堀あゆみ

プロセス動画

プロフィール

[Image]赤堀 あゆみ

赤堀 あゆみ (あかほり あゆみ)
1990年 愛知県生まれ。
家にあったカメラに興味を持ち、写真を撮りはじめる。
日本デザイナー芸術学院 写真学科卒業後、写真スタジオのアシスタントを経て、現在、カメラマンとして活動中。

2010年「2010JPS展」20歳以下部門 優秀賞受賞
2016年「第17回上野彦馬賞」日本写真芸術学会激励賞受賞
2022年 個展「けもののなまえ」(pieni_onni / 岐阜)

Vol.2 梶 瑠美花 「わたしのなかの彼女」(レビュワー:野村恵子)

SNSで繋がった見知らぬ女性たちを撮り続けたシリーズ。コロナ禍で他者とのコミュニケーションが希薄になる中、初対面の女性たちとカメラを通して対話し、他者との新たな関係性を模索していくことで自己も解放されていく過程が提示されている。

出展者コメント

″撮る/撮られるから、写真による対話へ″
SNSで繋がった見知らぬ女性たちと会い続けている。COVID-19の流行以降、医療従事者として閉鎖的に過ごさざるをえなかった私は、他者との関係性が希薄になるにつれ、現実的な自分を見失ってしまった。その後、わたしは7年ぶりにカメラを手にした。
SNSで繋がった彼女たちが選ぶ場所で共に過ごす時間。親しい間柄ではないからこそ、表出できるものもあるのだろうか。彼女たちとの関係性の中で、自身の自己も解放され、更新されていることを感じていた。このプロセスが、いつか自身の自己をも明確に取り戻していくような行為であることを願い、今日もまた、わたしは彼女を訪ねていく。

野村恵子コメント

未完成ながら面白く、広がりを感じる。初対面の人と会い、コミュニケーションし、彼女たちの世界に入り込んで撮るという意欲に圧倒された。展示に向けて客観的にセレクトしながら、もう少し撮り足していくとさらに良くなる。誰もが抱える心の闇と彼女らの輝きを表現できるよう、モノクロの階調を最大限に生かせる作品に仕上げていってほしい。

[Image]野村恵子/梶 瑠美花

プロセス動画

プロフィール

[Image]梶 瑠美花

梶 瑠美花 (かじ るみか)
福岡県生まれ。
福岡県立大学看護学部看護学科卒業。

2011年ごろより独学で写真をはじめる。
エステティシャン、美容専門学校講師、ドレスショップ店長を経て、看護大学を受験。コロナ禍を医療従事者として過ごす。
2022年より東京に拠点を移したことをきっかけに、女性の生き方やケアと関係性をテーマに、現在の作品制作に取り組む。

Vol.3 鎌田 三四郎 「影を遺す」 (レビュワー:小林紀晴)

コロナ禍であまりに簡素化された親族の葬儀で他人事のように感じられた違和感。これを契機に、自身のルーツである家族の結びつきを再確認するために、古い家族写真を発掘し、彼らが生活していた場に置き直す“儀式”によって新たな写真作品を生み出した。

出展者コメント

2020年のコロナ禍の中で、祖父と曽祖母を亡くした。
二人の葬儀は身内で火葬のみを行うもので、私は祖父の火葬に立ち会っただけで、線香もあげていなかったと記憶している。簡素化された葬式は、親族の死と自分とがまったく関わりがないような、あっけないものだった。
自身のルーツであるはずの彼らとの結びつきが感じられなくなるような感覚を覚えた私は、家族との繋がりを確認するために、古い家族写真を手に取った。
古い家族写真を家や家具、彼らがいた時間を感じさせてくれる場所に結びつけることで、時間の中で消えていく彼らの記憶や魂が、土地や固有の家具などに存在していることを写真作品で証明しようと試みた。

小林紀晴コメント

過去の写真と今の風景との組み合わせの中に、さまざまな工夫と試みがあり、興味深い世界を創り出している。展示に向けて、写真の配置の「必然性」を意識した上で、全体を改めて見直し、風景としての素材を撮り直すなどして、さらなる表現の可能性を模索してほしい。

[Image]レビュワー:小林紀晴/鎌田 三四郎

プロセス動画

プロフィール

[Image]鎌田 三四郎

鎌田 三四郎 (かまた さんしろう)
2001年 東京都生まれ。
2024年 日本大学芸術学部 写真学科卒業。

15歳ではじめて一眼レフカメラに触れる。持ち主であった祖父が亡くなったことをきっかけに、古写真やインスタント写真に興味を持つ。
記憶や身体、それらの不在をテーマに作品を制作している。

2022年「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2022」 T3 STUDENT PROJECT 出展
2024年 グループ展「ビジュアル・コミュニケーション展2024」(茨城県つくば美術館)

Vol.4 和佐 阿佑美「みどりのみち」 (レビュワー:公文健太郎)

約50年前に“理想の街”として計画されたニュータウン。人口が減少し高齢化が進む、かつては希望に満ちていたニュータウンの風景と、その中で母親の理想や思惑などを超えて力強く成長していく娘を対照的にとらえた作品には、未来に向けたさまざまな示唆が込められている。

出展者コメント

子供を産み育てるのは不思議な行為だ。 赤子のころは「お母さん似」と言われた娘も、今では夫と瓜二つ。一方で性格は嫌なくらい私に似ている。当然だが、遺伝子の半分ずつを両親から受け継いでいることに、妙な恐ろしささえ感じている。
泉北ニュータウンという、50年余前に開発された街に住んでいる。 C.A.ペリー(米国の社会・教育運動家、地域計画研究者)の『近隣住区論』に基づき計画された理想の街は、周辺から切り離されたかのように佇んでいる。
つい自分の理想に執着してしまうが、現実は思うようにはいかず、予想を遥かに超えていく。“計画された理想の街”で成長していく、凛とした娘の強さに救われている。その姿は、焦燥した私に「そのままでいい」と思わせてくれる。

公文健太郎コメント

家族や子供という身近な存在を捉えながら、ニュータウン政策の光と影という社会的テーマにまで切り込もうとする着眼点が良い。作品一点一点の質も高い。今後、客観的にセレクトし直し、周辺環境を表す写真も入れながら構成していってほしい。

[Image]公文健太郎/和佐 阿佑美

プロセス動画

プロフィール

[Image]和佐 阿佑美

和佐 阿佑美 (わさ あゆみ)
1986年 和歌山県生まれ。

デザイナー・写真家として幅広く活動。
社会の中で二項対立する物事の境目を見つめ、生じる問いを写真で表現している。

2021年より、大阪府堺市・泉北エリアに拠点を置く編集チーム「RE EDIT」に参加。