駒沢満晴氏インタビュー 駒沢満晴写真展 「自然・神秘の絶景を撮る」

駒沢満晴

駒沢満晴「太陽柱」 駒沢満晴「太陽柱」

2014年2月21日(金)~3月6日(木)まで開催される駒沢満晴写真展 「自然・神秘の絶景を撮る」について、駒沢満晴氏にインタビューいたしました。

――このような気象現象の写真を撮るようになったきっかけをお教えください。

駒沢 小学生のとき絵葉書で日本中の美しい景色を見て、「いつか実際に行って見てみたい」と思ったのが原点です。その後山岳写真に目覚めます。山へ行くと彩雲や幻日など、日常生活よりも自然現象を目にする機会が多くなります。偶然とはいえ見事な幻日を目にし、「この現象は何だろう、どうして起こるのだろう」と興味を持ちます。そして他の現象についても調べます。
知識がついてくるといろいろな自然現象を山岳写真にあしらおうと考えたわけです。新しい山岳ネイチャーの表現として。また北欧やアラスカでオーロラと出会い夜の世界にも目を向けるきっかけとなりました。1993年のペルセウス座流星群をきっかけにそれ以降は「流星のある星景写真(星空と地上の景色を合わせた写真)」がメインテーマとなっています。

――珍しい気象現象をたくさん見せていただけますが、こういった現象が起こることを予測して撮影ポイントに行くのでしょうか?その予測の方法について1つ2つお教えください。

駒沢 太陽柱や変形太陽(四角い太陽など)は観測されやすい場所、時季がありますのでそのころ数日滞在すれば撮影の可能性は高いです。太陽柱は北海道のピヤシリスキー場や富良野です。ダイヤモンドダストや太陽柱は近年大分認知されてきているようで、信州でも美ヶ原や霧ケ峰などで撮影された写真を見る機会が増えました。こういった「メッカ的な場所」以外でも冬季に気温-15°程度、自分と太陽の間に谷間がある場所なら朝夕太陽の下方を意識すれば案外観測できるかも知れません。ダイヤモンドダストがキラキラと舞っているのを確認できれば可能性はより上がると思います。
先ずこういう現象があると知るだけでも違うと思います。知らないから出ていても見過ごすケースも多いと思います。有名な四角い太陽は根室海峡を流氷が埋め尽くし風のない朝がチャンスです。幻日よりも出現頻度の低い環水平アークは初夏の正午前後、寒気が入ってきたときがチャンスだと思います。ただ予測はあくまで予測なので気象現象の場合は普段から空への意識を持つことが大切です。
気象現象に対し天文現象はいつ何日に起きることが決まっています。流星群も毎年決まった日に出現しますし(ただし出現数は年によって差があります)、肉眼彗星も何月何日に太陽に近づく、というのはかなり前からわかります(ただし昨年のアイソン彗星のように消滅する場合もあり予想どおりにならないケースもあります)。
 手前みそで恐縮ですが、昨年出版した「空のアート(地人書館)」に各現象ごとに撮影時の状況や撮影アドバイス等も記してあります。

――撮影にあたって苦労するところは?

駒沢 -20度前後の極寒の現象である太陽柱は先ず寒さに対する対策が不可欠です。私は普段から冬でも薄着で寒さに慣らすようにしています。天文現象はとにかく当日の天候にはやきもきさせられます。直前まで撮影地を決めかねることもしばしばです。また流星の撮影は今でこそデジタルカメラでオート露光機能を使えるので寝ていても撮影可能ですが、私はフィルムカメラで星空と向かい合いながら一晩中ひたすらシャッターを切り続けています。翌日は首筋など体が痛くなります。愚直なようですが素晴らしい流星が写野に現れたときの感動は何ものにも代えられません。そんなときは筋肉痛も心地よい痛みです(笑)。自然写真を長く続けるには最終的には体力維持だと思います。普段から健康に気を使い、駅でもなるべく階段を利用しています。なにしろ対象が簡単に撮らせてくれないものばかりです。撮れなくてもあきらめずモチベーションを保ち続けるようにしています。

――まだ撮影できていないが、「この現象を撮りたい」というものはありますか?

駒沢 冬の高緯度地方で観測される「真珠母雲」。彩雲の一種ですが彩雲とは比較にならないほどの美しさです。逆に夏の高緯度地方で観測される「夜光雲」。派手ではないですが神秘的です。以前夏のカナダにオーロラを撮影しに行きましたが、すっかりこの雲のことを忘れていて今となって後悔しています。また月光による現象も増やしたいですね。たとえば「月のブロッケン」とか。
不思議なことに「こういうシーンを撮りたい!」と日頃から強く思っていると思わぬシチュエーションで実現することを何度も体験しています。それと今は地球上のあらゆる景観と星空のコラボに力を入れています。そろそろヒマラヤの8000m峰の頭上に輝く流星を撮りたいですね。

――今回の写真展で、どのあたりを見て欲しいですか?

駒沢 先ず自然にはこのような神秘的で美しい表情がたくさんあるということを知ってほしいです。地震、竜巻、台風など近年自然に対しては恐ろしいものというイメージがあると思います。今回紹介するものはそれらとは対極にある「癒しを想起させる自然の姿」だと思います。
彩雲など比較的ポピュラーな現象ですが、今回は月による現象も取り上げています。太陽の出没により雪山がピンクや黄色に染まることは知られていますが、同様のことが月でも起こります。
そういったことを知ってもらえれば写真表現の幅が広がります。
真摯に自然と付き合えば必ずや自然は微笑んでくれると思います。

駒沢満晴「月光虹」 駒沢満晴「月光虹」

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