花火はいつ始まった?
花火のはじまりは「のろし」といわれており、その起源は紀元前の古代中国に栄えた秦の時代にまで遡ります。当時は、花火は見て楽しむものではなく、遠くにいる味方に情報や合図を伝えるための道具に使われていました。
鑑賞用の花火が誕生したのは14世紀ごろのイタリアで、当時行われたキリスト教のお祭りで登場したのがはじまりです。日本では、1733年に隅田川で行われた水神祭で慰霊と厄除けを祈願するために、花火が打ち上げられたのが最初だといわれています。
その後、花火は亡くなった方への鎮魂のために打ち上げられるようになりました。花火大会がお盆の時期に開催されるのが多いのも、花火に鎮魂の意味があるからです。
花火の構造と大きさの基礎知識
花火は、丈夫な紙を貼り合わせて作られた「玉皮」と、「星」と呼ばれる火薬のかたまりなどで構成されています。ボウルを真っ二つに割ったような半球形の玉皮の中に、花火の色や光のもとになる火薬の星を並べています。星の種類や並べ方によって、花火の形や広がり方などが決まります。
星は、花火玉の中心にある「芯」の外側から、青く光る火薬、赤く光る火薬、銀色に光る火薬というように、3つの輪ができるように並べるのが基本です。このほかに、玉皮を壊して星を飛び散らせるための火薬の「割り薬」や、割り薬に点火するための導火線を取り付けると花火玉の完成です。
大きな花火玉の中には、打ち上げられる最中に、しっぽのような光や小さな花の花火、ヒューと音が鳴るしかけ用の小さな花火玉がついているものもあります。
空に打ち上げられた花火玉は、導火線から火が伝わった割り薬が爆発を起こして玉皮を壊し、空に飛び出した星に着火することでキレイな色で燃えながら広がっていきます。玉皮の中に円を描くように並べられた星は、三重の輪の花火へと変化します。
花火玉の大きさは、直径7.5センチの2.5号玉から直径30センチの10号玉、さらにもっと大きなものもあり、大きさごとに「3号玉」や「5号玉」などのように号数で呼ばれるのが一般的です。10号玉は一尺(約30センチ)あることから、大きな花火を「尺」と呼ぶこともあります。
打ち上げ花火の種類
日本の打ち上げ花火は大きく分けて、「割物」「半割物(小割物)」「ポカ物」の3種類があります。それぞれの特徴や違い、仕組みについては以下で解説します。
割物(わりもの)
割物(わりもの)とは、割り薬を爆発させることで色や煙を出す星を空に飛び出させる仕組みの打ち上げ花火です。花火が点火すると、すべての星が光を発しながら四方八方に飛び散り、光の輪が夜空に映し出されます。割物は、球状の花火玉が全方向に飛び散る様が「世界一美しい」と海外の人から称賛されている日本の伝統的な打ち上げ花火の基本形です。
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割物の例:菊(きく)
割物の例:菊(きく)
菊(きく)は、日本の伝統的な花火の一つです。星が光の尾を引きながら放射状に飛び散る姿が菊の花に似ていることから、「菊花火」と呼ばれています。花弁の先の色が変化する花火は、「変化菊」の名で親しまれています。
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割物の例:牡丹(ぼたん)
割物の例:牡丹(ぼたん)
牡丹(ぼたん)は、尾を引かずに花を咲かせる花火を指します。菊花火よりも鮮やかに光るのが魅力です。星にマグネシウムなどを混ぜた明るい花火のことを「ダリヤ」と呼んでいます。花火の色が明るくインパクトが強く、スターマインに使われることが多いです。
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割物の例:冠(かむろ)、冠菊(かむろぎく)
割物の例:冠(かむろ)、冠菊(かむろぎく)
冠(かむろ)は、星が長時間燃え続けて独特な形で花を咲かせる花火です。大きな輪が広がりながら流れ落ち、地面の近くで消える特徴があります。日本では、おかっぱ頭のことを「禿=かむろ」と呼んでいた時代がありました。おかっぱ頭とこの花火の形が似ていると考えられたことから、「冠(かむろ)」と名付けられたといわれています。
割物の例:型物(かたもの)
型物(かたもの)は、点や線で光り、ハートやスマイルマーク、蝶、土星などのさまざまな形を描くことができる花火です。割物花火を応用して作られました。
近年では、立体的な形状や文字を再現できるほど技術が向上し、花火で描ける形や文字のバリエーションが増えています。型物は球状ではなく平面に光る花火なので、見る角度によっては線にしか見えない場合があります。
半割物(小割物)
半割物(小割物)は、大きな一つの花ではなく、小さな花火玉をいくつも破裂させて夜空に小さな花をたくさん咲かせる花火です。時間差で花が開くものなど、さまざまなタイプの新作も続々と発表されています。
半割物の例:千輪(せんりん)
千輪(せんりん)は、花火玉が上空で割れた際に、中から飛び出した小玉が時間差で一斉に開く、しかけが施された花火です。花束のように小さな光の花が満開になります。花火玉が上空で破裂した瞬間は何も見えませんが、一息おいてから彩り豊かな小花が開く「千輪菊」は、半割物を代表する花火の一つです。
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割物の例:万華鏡(八方咲き)
割物の例:万華鏡(八方咲き)
万華鏡(八方咲き)は、和紙で包んだ星を分散させて花火玉に詰めた花火です。八方咲きとも呼ばれています。夜空で、包んだ星が破裂すると同じ色の花弁が放射状に色の光となって開き、万華鏡を覗いたように見える特徴があります。万華鏡は、ポインセチアの花を夜空に咲かせようと考案された花火でしたが、改良後に万華鏡と呼ばれるようになりました。
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割物の例:椰子(やし)
割物の例:椰子(やし)
椰子(やし)は、椰子の葉のように太い花弁が全方向に伸びるようにデザインされた花火です。一般的な花火で使用される星よりも大きな星を使用することで、光の尾を太く大きく見せています。花火の形が椰子の葉に似ていることから、椰子と呼ばれるようになりました。
ポカ物
ポカ物は、球体の玉皮が夜空で真っ二つに割れ、中に詰められていた星や細工を放出する花火を指します。割り薬の量は一般的な花火よりも少なく、花火の広がる範囲も狭いのが特徴です。ただし、内包する種類によって、さまざまなしかけを持つ花火に工夫できます。
ポカ物の例:蜂 (はち)
蜂(はち)は、花が開くときに火花を散らす代わりに、まとまった状態のまま四方八方に動くユニークな花火です。花火玉が割れると、火薬を詰めた紙の筒などからシュルシュルと音を鳴らしながら回転します。不規則な動きと回転時に聞こえる音が蜂に似ていることから、蜂と名付けられました。
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ポカ物の例:柳(やなぎ)
ポカ物の例:柳(やなぎ))
柳(やなぎ)は、上空で柳の枝が垂れ下がるように光りが流れ落ちる花火です。最近では、彩色柳などのさまざまな色が光る柳花火があり、流れ落ちる際に色が変化するものも登場しています。柳は、スターマインなどで場面を転換させたいときや、余韻を残したいときに使われています。
花火の写真撮影テクニック
花火を美しく撮影するにはコツがいります。花火を上手に撮影できないという人は、以下の撮影テクニックを参考にしてみてください。
まずは場所選びが大切!
花火を美しく撮影するには、風向きを考慮した場所選びが大切です。風下から撮影すると花火の煙でぼやけたり、花火の燃えカスが降ってきたりする場合もあるので、風下を避けた場所を選びましょう。おすすめは、発射場所から約400~500メートルくらい離れた場所です。
花火の撮影ではシャッタースピードが遅くなりやすいので、三脚を使用してしっかりと立てられる場所を確保しましょう。桟敷席などの混み合う場所で三脚を立てると周りの人に迷惑をかけてしまう場合もありますが、会場から離れた場所から撮影すれば周囲を気にせずに花火の撮影に集中できます。
撮影テクニック
シャッターボタンを押すときのブレを抑えたい場合は、ケーブルレリーズやリモートコードの使用をおすすめします。
カメラで撮影するとき、シャッターボタンを押してからシャッターが開くまでには若干の時間差があります。花火が開くより前にシャッターボタンを押すように工夫すると良いでしょう。シャッターボタンの押すタイミングが遅れると、中心のない中抜けの花火になってしまいます。
スターマインなどの連発の花火を撮影する場合は、花火の明るさで真っ白に映ってしまうケースも少なくありません。シャッタースピードの長さに対し、打ち上げられる花火の数が多いときは手のひらなどでレンズを覆い、明るさを調整して撮影しましょう。
また、連発花火のクライマックスは後半なので、打ち上げが始まってから少し時間を遅らせて撮影すると、良い写真が撮れることが多いですよ。
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